1期 阿部章さん (株)パルサー 【宮城県仙台市】
業界のバイアスを振り払い、
思い切った事業展開に踏み出せた
御社の事業内容を教えてください。
阿部章さん(以下阿部):1989年、平成元年に創業した会社で、自動販売機や自動券売機、セルフレジなどの卸売を行っています。私は、2008年にこの会社を承継しました。その当時からつぶれそうな会社だったのですが、そのうえリーマンショックが2008年9月にあり、3年後には東日本大震災があり…。頭を抱えることも、一度や二度じゃありませんでした。
阿部さんがRIPSで学んだのは2013年ですね。どんなきっかけで入塾したのでしょうか。
阿部:所属している宮城県中小企業家同友会の推薦で入塾しました。RIPSが立ち上がったばかりの1期生です。私は環境に左右されるほうなので、刺激を受ける環境に身を置いて、勉強したいという気持ちがありました。
実際に入塾してみて、どんな刺激がありましたか?
阿部:いろいろな業界の人に出会い、人脈が広がったのがまずひとつ。それから、さまざまな授業を通して、視野を広げることもできました。特によかったなと思うのは、グループディスカッションです。自分の事業やビジネスのアイディアについて、さまざまな角度から話を聞くことができました。ふだん仕事の話は、業界の人としかしないでしょう。ですが、RIPSには、いろいろな考え方を持った、いろいろな業界の人がいます。ほかの人には当たり前のことでも、うちの業界にとっては新しい考え方だったりする。とても刺激的な時間でした。
印象に残っている事業はなんですか?
阿部:みんなそう言うかもしれませんが、やはり「デザイン思考」です。卸売りの価値は何なのか、ユーザーに対する価値は何なのか、腰を据えて考えることができました。「デザイン思考」の手法を使って物ごとを考えると、スピーディに、間違いなく価値を転換することができます。「デザイン思考」の考え方は、今でも自分の考え方の根本になっていますね。
最終プレゼンでは、どんな内容のプレゼンを行ったのでしょうか。
阿部:「次世代オーダー決済システム」について発表しました。これは、スマートフォンを活用し、決済や顧客管理などを自動化するシステムです。今後、飲食店は人手不足の時代になります。そこを機械やシステムでカバーするにはどうしたらいいのか、どうしたら解像度が高い計画になるのか、何度も書き直しながら模索しました。市場調査も細かく細かくやって。すごく大変でしたよ!事業計画書は最終的に54ページになりました。でも、その計画書を完成させる過程で、バイアスを取り払うことができたと感じています。
どんなバイアスですか?
阿部:卸売だからここまでしかできない、売り上げはここまでしか上がらないだろう、というバイアスです。市場規模の大きさや成長率を調べていくうちに、やろうと思えば全国展開もできるじゃん!と視点を変えることができました。RIPS卒業後は、東京にも支社を出し、関東圏のお客さまも増えてきました。RIPSに通っていた2013年と比べて、2021年の売り上げはおよそ10倍になっています。コロナ禍で自販機の需要が伸びてきたこともあり、私のビジョンが時代にマッチしてきたと感じています。歯車が回り始めてきました。
後輩にメッセージをお願いいたします。
阿部:私は、やらないのが一番の失敗だと思っています。やってみる方が、価値があります。今忙しいとしても、少し何かを変えないと何も変わりません。今の環境から一歩踏み出すことが大事です。RIPSに入塾した人はみんな、「早く受けておけばよかった!」と言います。現状に不満があって、なにか課題を感じているなら、ぜひ、一歩踏み出してみてください。
沼田佐和子
株式会社よごと企画 代表取締役
コピーライター宮城県(名取市閖上)出身。早稲田大学卒業。東北大学地域イノベーションプロデュサー塾(RIPS)7期生。仙台市の編集プロダクションで旅行情報誌「るるぶ情報版」などで観光やグルメのライティングに携わる。広告制作会社執行役員を経て、2019年10月株式会社よごと企画設立。東日本大震災の広報事業のプランニング等のほか、広報・プロモーションに関するコンサルティング、ブランディングに携わる。
2016年~2021年 宮城県発行『復興情報誌NOW IS.』(月刊)創刊・企画・編集・執筆 2016年~現在 仙台市立荒巻小学校 起業家育成・総合的な学習オブザーバー 2017年~現在 仙台デザイン専門学校 コピーライティング講師 2020年~現在 仙台市産業振興事業団 ビジネス開発ディレクター