Regional Innovation Research CenterGraduate School of Economics and Management, Tohoku University

地域イノベーション研究センター

東北地域のイノベーション能力の向上を図り、東北地域の産業振興と経済発展に貢献する ために必要な諸事業の企画、実施および調整を行うことを目的とします。

1期 櫻井鉄矢さん (株)仙台買取館、(株)サムライアロハ 【宮城県仙台市】

2022年4月15日
1期櫻井鉄矢さん

夢を語ると「それいいじゃん!」と 言ってくれる相手に出会えた

(株)仙台買取館 代表取締役 
(株)サムライアロハ 代表取締役
櫻井 鉄矢さん(RIPS1期生)

RIPSに入った動機は何でしたか?

櫻井鉄矢さん(以下櫻井):話すとちょっと長くなるのですが、私は大学卒業後、中小企業診断士として身を立てようとしました。その経験自体は楽しかったのですが、経営について学びを深めるうちに、生きた知識を得て、現場で戦いたいという想いが強くなり、2004年に古物商である株式会社大黒屋に入社しました。そこでフランチャイズの仕組みづくりに関わり、その仕組みを使って、2011年に「仙台買取館」を開業したんです。もともと地元に帰る気は無かったのですが、この会社を通して、地元に何か新しい風を吹かせられたら、という気持ちもありました。震災直後ということもあり、3年間がむしゃらに頑張りましたが、なんだか「振り回されている」という感じもあって。自分にしっかりした軸を持ちたいと思っていた時にRIPSに出会ったんです。

RIPSを通して解決したいと思っていたこと、学びたいと思っていたことはどんなことですか?

櫻井:「価値」って何なんだろうという漠然とした疑問がいつもあって。あえて言えばそういうことに答えを見出したかった。「仙台買取館」に持ち込まれてくるのは、売主にとっては「いらないもの」であり、「ゴミ」です。でもその「ゴミ」が、ほかの人にとっては価値があるものになる。海外に持って行くと、高額で取引されるようになったりする。そういう価値の転換みたいなことが、商売につながるのではないかな、とあの頃、考え始めていました。

RIPSでは、どんなことを学びましたか?

櫻井:今でも見直すことがあるのは「ビジネスモデルシート」です。これを書いてみると、自分の考えているビジネスを俯瞰で見渡すことができます。ビジネスの世界を戦いの場だと位置づければ、RIPSで学ぶことは銃の打ち方だと思っています。その銃を使ってどう戦うかは、自分次第ですね。私にとっては、じっくりビジネスのアイディアと向き合うきっかけになりました。

櫻井さんは、卒業後、「仙台買取館」以外にもさまざまな事業を立ち上げています。詳しくお聞かせいただけますか。

櫻井:まずはRIPS卒業後の2015年に、「日本一まずいお米」のブランドを立ち上げました。食味がよくないお米を、糖尿病などのご病気でカロリー制限を余儀なくされている方に、たくさん食べられるお米として販売しました。
また、合資会社「未来フードデザイン」を立ち上げ、風評被害などで困っている農家さんの食材を使った料理の宅食サービスを始めました。どちらも、「食味が悪い」「風評被害」などで落とされた「価値」を、プラスに転換しているのがポイントです。
それから、今は株式会社化している「サムライアロハ」もこのころスタートしました。「サムライアロハ」は、家庭の箪笥のなかで眠っている古い着物を、19,800円~29,700円のアロハシャツにして販売するというビジネスです。着物は、リサイクルショップに持って行っても数百円にしかなりませんが、アロハシャツという新たな価値を付加することによって、海外の人がこぞって買ってくれるアイテムに形を変えることができるんです。
2021年からは、東北芸術工科大学とコラボして、学生たちの美術品をECサイトで販売するという事業を立ち上げました。学生たちの作品でしかなかった絵画や彫刻も、値段という価値をつけることで、市場に流通する美術品にすることができました。

破竹の勢いですね。起業家として、憧れる人も多いのではないでしょうか。

櫻井:起業家なんてカッコイイことはしてないですね。ビジネスチャンスを見つけると、それで何かをしないと、という恐怖感があるだけです。失敗もたくさんあります。でも、RIPSの学びや出会いを通して、何度もやってみるという意識がついたかもしれません。

今、櫻井さんにとって、RIPSでの経験はどんなものとして残っているでしょうか。また、後輩にメッセージがあったらお願いします。

櫻井:人間は変化を好みません。できるだけ現状を維持し、このままの生活を送りたいと思っている。大人になると特にそうです。「こんなことをしてみたいんだ」と夢を話すと、たいがいの人には笑われてしまう。でも、RIPSはそうではありませんでした。あんなことがしてみたい、こんなビジネスのアイディアがある、と話すとみんな前のめりで聞いてくれます。それいいじゃん!と言ってくれる相手に出会えたのは大きいと思っています。
RIPSで何を学べるかは、それぞれのモチベーション次第だと思います。でも、私は行ってよかったと思いますし、仲間と出会えたことが、そのあとのビジネスにつながったなと思っています。

この記事のインタビュアー
  • 沼田佐和子

    株式会社よごと企画 代表取締役
    コピーライター

    宮城県(名取市閖上)出身。早稲田大学卒業。東北大学地域イノベーションプロデュサー塾(RIPS)7期生。仙台市の編集プロダクションで旅行情報誌「るるぶ情報版」などで観光やグルメのライティングに携わる。広告制作会社執行役員を経て、2019年10月株式会社よごと企画設立。東日本大震災の広報事業のプランニング等のほか、広報・プロモーションに関するコンサルティング、ブランディングに携わる。

    2016年~2021年 宮城県発行『復興情報誌NOW IS.』(月刊)創刊・企画・編集・執筆
    2016年~現在 仙台市立荒巻小学校 起業家育成・総合的な学習オブザーバー
    2017年~現在 仙台デザイン専門学校 コピーライティング講師
    2020年~現在 仙台市産業振興事業団 ビジネス開発ディレクター